プレゼント─前編─
2004年2月18日朝一番に見たメールは、劇団員からの
ご主人様の誕生日会に関する内容だった。
ご主人様の誕生日の前日…
今年は閏年だから、2月29日に都内の中華料理店で誕生会を行うと言うことだ。
メールの最後には「一応、カズさんには内緒で」とのこと。
ふーん…粋じゃないか。
「誕生日、といえばプレゼントか」
私としては珍しい考えが脳裏をかすめた。
もとより、プレゼントと言うもの自体が
好きじゃないというか興味がないというか…
今まで誰かの誕生日でも、覚えていてもメールや電話の1本入れる程度、
たまたま一緒にいたならばせいぜい軽くご飯を奢るとか
手持ちのお菓子をあげることくらいしかしてこなかったため、
誕生日プレゼント、ということを考え付いても、
まず「じゃあそれは一体どうしたら良いのか?」と言う
あまりにも原始的な疑問から始まった。
「プレゼント、買いに行こうかな」
幸い今日は一日オフ。しかも、そこそこ早起きをした。
買い物に行くにはコンディション的に好条件ではある。
だが同時に、用意するには時期が早いのではないか、とも思った。
果たしてプレゼントはいつくらいまでに用意するのか、ということに
ルールというか作法と言うか、そういったものがあるのかは知らないが、
どちらにせよ普段の私の性格からすれば、例えプレゼントするにしても、
会う直前に買うか、あるいは会ってから一緒に店に行って
「○○円以内で好きなものを選べ」とするのが関の山だろう。
世の中には誰かの為にプレゼントを選ぶのが好き、という人間もいる。
全く理解不能だ。
もちろん、欲しいものを間違いなく当ててくれるのならまだいいが、
欲しくもないものを貰い、
「わー嬉しい!ありがとう」
と言わされるのならば、それはプレゼントした側の趣味…
いや、言ってしまえばエゴに付き合うだけに過ぎず、
むしろ「貰った身」でも、「してあげた身」な気すらする。
そういう人は多分、貰った相手の喜ぶ顔しか想像できないのだろう。
おめでたいものだ、と思う。
…もちろん、そこまで世の中をうがった目で見る必要はないし、
そんな自分がひねくれている、ということは百も承知なのだが。
そういえば、ファンにはそういう女が多い気がする。
全く、おめでたいものだ。しかし、今日だけはそれが少し羨ましく感じた。
そんな事を考えながら街に出る支度をした。
せっかくの休みに都心まで出る気にはなれないから、地元で良いだろう。
地元、という響きはどこか田舎っぽく聞こえるが、一駅出れば充分に栄えているし、
洒落たプレゼントの一つ二つ買える場所はいくらでもある。
「しかし…困ったな」
玄関の鍵を閉めながら独りごちた。
勇んで家を出はするものの、いまだプレゼントの見当はつかない。
贈る相手の情報を元に喜びそうなものを推理するにも、
ご主人様─カズさんという人は難しすぎる。
これと言って趣味はない。
元より公私の境がほとんど無いような生活をしており、
それを踏まえて強いて言うなら、趣味も仕事も好きなことも演劇なのだろう。
それに、欲しいものを自分ですぐに買ってしまうだけの財力もある。
アクセサリーはつけないし、煙草も吸わない。
服も持ち物も自分の気に入ったものしか身につけない。
貰ったものでも気に入らなければ容赦なく、
箪笥の肥やしにされるのはまだいい方で、
下手すれば失くされたり捨てられたりする。
もう、いくつもそういう末路を辿った「カズさんへのプレゼント」達を見てきた。
電車に乗り、駅を出て、街をフラフラと歩きながらも全く名案は思いつかず、
ヤケになって冬物処分セールで自分の服を買ってしまった。
全く、セール×魔法のカードと言う方程式は危険極まりない。
ただ、自分の服一つ買うにも最近では
「ご主人様、これ着てたら可愛いって言ってくれるだろうか」
なんて考えながら選んでしまう自分が滑稽だった。
ご主人様の誕生日会に関する内容だった。
ご主人様の誕生日の前日…
今年は閏年だから、2月29日に都内の中華料理店で誕生会を行うと言うことだ。
メールの最後には「一応、カズさんには内緒で」とのこと。
ふーん…粋じゃないか。
「誕生日、といえばプレゼントか」
私としては珍しい考えが脳裏をかすめた。
もとより、プレゼントと言うもの自体が
好きじゃないというか興味がないというか…
今まで誰かの誕生日でも、覚えていてもメールや電話の1本入れる程度、
たまたま一緒にいたならばせいぜい軽くご飯を奢るとか
手持ちのお菓子をあげることくらいしかしてこなかったため、
誕生日プレゼント、ということを考え付いても、
まず「じゃあそれは一体どうしたら良いのか?」と言う
あまりにも原始的な疑問から始まった。
「プレゼント、買いに行こうかな」
幸い今日は一日オフ。しかも、そこそこ早起きをした。
買い物に行くにはコンディション的に好条件ではある。
だが同時に、用意するには時期が早いのではないか、とも思った。
果たしてプレゼントはいつくらいまでに用意するのか、ということに
ルールというか作法と言うか、そういったものがあるのかは知らないが、
どちらにせよ普段の私の性格からすれば、例えプレゼントするにしても、
会う直前に買うか、あるいは会ってから一緒に店に行って
「○○円以内で好きなものを選べ」とするのが関の山だろう。
世の中には誰かの為にプレゼントを選ぶのが好き、という人間もいる。
全く理解不能だ。
もちろん、欲しいものを間違いなく当ててくれるのならまだいいが、
欲しくもないものを貰い、
「わー嬉しい!ありがとう」
と言わされるのならば、それはプレゼントした側の趣味…
いや、言ってしまえばエゴに付き合うだけに過ぎず、
むしろ「貰った身」でも、「してあげた身」な気すらする。
そういう人は多分、貰った相手の喜ぶ顔しか想像できないのだろう。
おめでたいものだ、と思う。
…もちろん、そこまで世の中をうがった目で見る必要はないし、
そんな自分がひねくれている、ということは百も承知なのだが。
そういえば、ファンにはそういう女が多い気がする。
全く、おめでたいものだ。しかし、今日だけはそれが少し羨ましく感じた。
そんな事を考えながら街に出る支度をした。
せっかくの休みに都心まで出る気にはなれないから、地元で良いだろう。
地元、という響きはどこか田舎っぽく聞こえるが、一駅出れば充分に栄えているし、
洒落たプレゼントの一つ二つ買える場所はいくらでもある。
「しかし…困ったな」
玄関の鍵を閉めながら独りごちた。
勇んで家を出はするものの、いまだプレゼントの見当はつかない。
贈る相手の情報を元に喜びそうなものを推理するにも、
ご主人様─カズさんという人は難しすぎる。
これと言って趣味はない。
元より公私の境がほとんど無いような生活をしており、
それを踏まえて強いて言うなら、趣味も仕事も好きなことも演劇なのだろう。
それに、欲しいものを自分ですぐに買ってしまうだけの財力もある。
アクセサリーはつけないし、煙草も吸わない。
服も持ち物も自分の気に入ったものしか身につけない。
貰ったものでも気に入らなければ容赦なく、
箪笥の肥やしにされるのはまだいい方で、
下手すれば失くされたり捨てられたりする。
もう、いくつもそういう末路を辿った「カズさんへのプレゼント」達を見てきた。
電車に乗り、駅を出て、街をフラフラと歩きながらも全く名案は思いつかず、
ヤケになって冬物処分セールで自分の服を買ってしまった。
全く、セール×魔法のカードと言う方程式は危険極まりない。
ただ、自分の服一つ買うにも最近では
「ご主人様、これ着てたら可愛いって言ってくれるだろうか」
なんて考えながら選んでしまう自分が滑稽だった。
コメント