嫉妬しぃ
2004年2月20日「あのね、あのね」
私があのね、から言葉をはじめるときは、大抵言いにくいことがあるときだ。
今回のはいつにも増して相当言いにくいから、あのねが2回。
「どうした?」
流石にご主人様もそういったことがわかるようになったのか、
仰向けに寝っ転がって読んでいた、やたらと分厚い漫画本を脇に置いて
自分の胸の上に乗っけるように私を抱く。
そうすると耳元に直接語りかける形になる。
私が言いにくいことになると途端に声が小さくなると言うことも
見抜いているのかもしれない。
「あのね、土曜日、男の人と二人で会うんですけど…」
カチン、という音が聞こえたようだった。
ご主人様の最近の徹底した束縛っぷりは、もはや嫉妬と紙一重である。
そんなこと、本人は絶対に認めないと思うけど。
「なんでそんなことする必要があるんだ?」
「え?えーとぉ……」
果たして「断る理由がなかったから」と言うのは正当な理由になり得るのか。
口に出す理由を考えあぐねていると、
ご主人様がいつもより少し低い声で言葉を続けた。
「男と二人で会うってことはお前はそいつとセックスしてしまうんだろう?」
「ぐぇっ?!」
何を言い出すのだ、という驚きと、髪の毛を鷲掴みにして
無理矢理目を合わせる形に頭を引き上げられた驚きが
このみっともない鳴き声(?)を上げさせた。
「ししし、しないですよぉ?!」
いや、マジで。そういう対象の人じゃないし、
誘われても間違いなく丁重にお断りするだろう。
相手を知らないとはいえご主人様はすでに完全なる暴走を始めている。
「いーや。お前はする。信用ならん」
まるで「はい、実はセックスします」と
言わせたいんじゃないかと言うくらいきつい口調。
「だ、だって、えーと…」
うーん。明確な目的及び理由が無いため弁解できない。
「誰の身体だと思ってんだ」
「そ、それはもちろん、ご主人様のですけどぉ…」
「勝手に使うなっていつも言ってるだろ」
「使ってませんってばっ」
もちろん、私の身体の話である。
「例えばセックスまでしなくても
体触られたりキスされたりしない保証がどこにあるんだ」
「う…そういうものなんですかねぇ…?」
その男性に対してはそういうイメージが全くないので言葉が濁る。
「お前は本当に危機感が薄い!鈍い!」
何もそこまで言わなくても、という気持ち半分、
そうかもしれないなぁ、という気持ちも半分。
「そういう可能性はほとんど考えてませんでしたが…
でも、とりあえず不義密通する度胸はないので報告してみたんですが…」
「確かに内緒で会うのはもっと悪い。」
「だしょ?」
我ながら「だしょ?」はないだろうよ、と思いつつ。
「会って何するんだ」
「えーとぉ。ご飯食べる。」
「それだけ?」
「あと、遅くなったけど成人式のお祝いくれるっていうから。
澪はお返しも兼ねてバレンタイン兼誕生日プレゼントあげる。」
またも、カチン、という音が聞こえた気がした。
いや、ブチン、だったのかもしれない。
「バレンタイン、なんでくれないんだろうと思ってたんだけど。」
「は?だって、他の女からいっぱい貰ったろうと思って。」
女、と書いて「ひと」と読む。
まぁ、実際事務所には幾ばくかのチョコが届いていたし。
「そんなに貰ってないぞ?ここに届いたのくらいだ。」
それはどうだか、ご主人様こそセフレと不義密通して
いろいろもらったんじゃないの?…なんて疑惑は飲み込むとして。
「…欲しかったんですか?」
「誰かにチョコあげたのか?」
「あっ、そうそう、お兄ちゃんにあげたんですよ!
お父さん以外の男の人にあげたのは初めてでドキドキしちゃいました」
今度こそ、確実にブチン、という音が聞こえた。
私は多分猛烈な単細胞なのだと思う。何をウキウキ口調で語ってるんだ。
お兄ちゃん、とは実兄ではなく仲の良い友人の男性芸人のことだ。
「ふーん」
言ったあとに己の単細胞に気付いたのだから仕方がない。
客観的にみれば、計算で嫉妬させようとしてる風にも取れる発言だ。
「…遅くなったけど、いいですか?」
「…何」
あぁ、完全に拗ねている。
「…バレンタイン。」
ご機嫌取りにそんなことを言いつつ、頭の中は
チョコ?チョコで良いのか?それとも何か別の…と
またプレゼントで悩まされていた。
が。
そんな考えも吹き飛ぶくらいご主人様はにこやかにしていた。
期待に満ちた、エサを待つ犬コロの目。
「絶対に期待しないで下さいよ?」
大きく芝居がかった溜息をつく私を犬コロの笑顔で見るご主人様。
犬コロみたいなご主人様、って矛盾している。まぁ、いいけど。
「絶対に食事するだけだぞ」
どうやら、話は戻ってきたらしい。
「いや、そりゃもちろん」
「今、どこでどうしてるか逐一報告しなさい」
そ、そこまで言い出すか。「嫉妬しない」が聞いて呆れるわ。
「はー…わかりました…」
「でも」
「ふぇい?」
再び我ながら「ふぇい?」はないだろうよ、と思いつつ。
「俺に悪いことするなーって思ってちゃんと報告するお前は
健気でちょっと可愛いな」
「だからとにかく不義密通する度胸なんてないんですってば」
私の頭をグリグリ撫でながら何故か満足そうな顔のご主人様。
何を考えてるのか良くわからんが、
この人に束縛されることは非常に「面白い」な、と思うのである。
「あ、それから渡すプレゼントはガム以上ハンカチ未満な!」
……面白いなぁ、と思うのである。
私があのね、から言葉をはじめるときは、大抵言いにくいことがあるときだ。
今回のはいつにも増して相当言いにくいから、あのねが2回。
「どうした?」
流石にご主人様もそういったことがわかるようになったのか、
仰向けに寝っ転がって読んでいた、やたらと分厚い漫画本を脇に置いて
自分の胸の上に乗っけるように私を抱く。
そうすると耳元に直接語りかける形になる。
私が言いにくいことになると途端に声が小さくなると言うことも
見抜いているのかもしれない。
「あのね、土曜日、男の人と二人で会うんですけど…」
カチン、という音が聞こえたようだった。
ご主人様の最近の徹底した束縛っぷりは、もはや嫉妬と紙一重である。
そんなこと、本人は絶対に認めないと思うけど。
「なんでそんなことする必要があるんだ?」
「え?えーとぉ……」
果たして「断る理由がなかったから」と言うのは正当な理由になり得るのか。
口に出す理由を考えあぐねていると、
ご主人様がいつもより少し低い声で言葉を続けた。
「男と二人で会うってことはお前はそいつとセックスしてしまうんだろう?」
「ぐぇっ?!」
何を言い出すのだ、という驚きと、髪の毛を鷲掴みにして
無理矢理目を合わせる形に頭を引き上げられた驚きが
このみっともない鳴き声(?)を上げさせた。
「ししし、しないですよぉ?!」
いや、マジで。そういう対象の人じゃないし、
誘われても間違いなく丁重にお断りするだろう。
相手を知らないとはいえご主人様はすでに完全なる暴走を始めている。
「いーや。お前はする。信用ならん」
まるで「はい、実はセックスします」と
言わせたいんじゃないかと言うくらいきつい口調。
「だ、だって、えーと…」
うーん。明確な目的及び理由が無いため弁解できない。
「誰の身体だと思ってんだ」
「そ、それはもちろん、ご主人様のですけどぉ…」
「勝手に使うなっていつも言ってるだろ」
「使ってませんってばっ」
もちろん、私の身体の話である。
「例えばセックスまでしなくても
体触られたりキスされたりしない保証がどこにあるんだ」
「う…そういうものなんですかねぇ…?」
その男性に対してはそういうイメージが全くないので言葉が濁る。
「お前は本当に危機感が薄い!鈍い!」
何もそこまで言わなくても、という気持ち半分、
そうかもしれないなぁ、という気持ちも半分。
「そういう可能性はほとんど考えてませんでしたが…
でも、とりあえず不義密通する度胸はないので報告してみたんですが…」
「確かに内緒で会うのはもっと悪い。」
「だしょ?」
我ながら「だしょ?」はないだろうよ、と思いつつ。
「会って何するんだ」
「えーとぉ。ご飯食べる。」
「それだけ?」
「あと、遅くなったけど成人式のお祝いくれるっていうから。
澪はお返しも兼ねてバレンタイン兼誕生日プレゼントあげる。」
またも、カチン、という音が聞こえた気がした。
いや、ブチン、だったのかもしれない。
「バレンタイン、なんでくれないんだろうと思ってたんだけど。」
「は?だって、他の女からいっぱい貰ったろうと思って。」
女、と書いて「ひと」と読む。
まぁ、実際事務所には幾ばくかのチョコが届いていたし。
「そんなに貰ってないぞ?ここに届いたのくらいだ。」
それはどうだか、ご主人様こそセフレと不義密通して
いろいろもらったんじゃないの?…なんて疑惑は飲み込むとして。
「…欲しかったんですか?」
「誰かにチョコあげたのか?」
「あっ、そうそう、お兄ちゃんにあげたんですよ!
お父さん以外の男の人にあげたのは初めてでドキドキしちゃいました」
今度こそ、確実にブチン、という音が聞こえた。
私は多分猛烈な単細胞なのだと思う。何をウキウキ口調で語ってるんだ。
お兄ちゃん、とは実兄ではなく仲の良い友人の男性芸人のことだ。
「ふーん」
言ったあとに己の単細胞に気付いたのだから仕方がない。
客観的にみれば、計算で嫉妬させようとしてる風にも取れる発言だ。
「…遅くなったけど、いいですか?」
「…何」
あぁ、完全に拗ねている。
「…バレンタイン。」
ご機嫌取りにそんなことを言いつつ、頭の中は
チョコ?チョコで良いのか?それとも何か別の…と
またプレゼントで悩まされていた。
が。
そんな考えも吹き飛ぶくらいご主人様はにこやかにしていた。
期待に満ちた、エサを待つ犬コロの目。
「絶対に期待しないで下さいよ?」
大きく芝居がかった溜息をつく私を犬コロの笑顔で見るご主人様。
犬コロみたいなご主人様、って矛盾している。まぁ、いいけど。
「絶対に食事するだけだぞ」
どうやら、話は戻ってきたらしい。
「いや、そりゃもちろん」
「今、どこでどうしてるか逐一報告しなさい」
そ、そこまで言い出すか。「嫉妬しない」が聞いて呆れるわ。
「はー…わかりました…」
「でも」
「ふぇい?」
再び我ながら「ふぇい?」はないだろうよ、と思いつつ。
「俺に悪いことするなーって思ってちゃんと報告するお前は
健気でちょっと可愛いな」
「だからとにかく不義密通する度胸なんてないんですってば」
私の頭をグリグリ撫でながら何故か満足そうな顔のご主人様。
何を考えてるのか良くわからんが、
この人に束縛されることは非常に「面白い」な、と思うのである。
「あ、それから渡すプレゼントはガム以上ハンカチ未満な!」
……面白いなぁ、と思うのである。
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